

「アルバイトにも賞与」 (大阪高裁) 労働契約法
学校法人・大阪医科大(大阪府高槻市、現・大阪医科薬科大学)の元アルバイト職員の50代女性が「正社員らと同じ仕事にもかかわらず賞与(ボーナス)がないのは違法」として大学側に1270万円の損害賠償を求めた。
18年1月の大阪地裁判決は「(賞与は)長期雇用を想定して支給している」「正職員の雇用を確保する動機付けとして一定の合理性がある」とし、請求を退けた。
だが、大阪高裁(江口とし子裁判長)は19年2月15日、労働契約法20条に違反するとして109万円の支給を命じた。
高裁は賞与の性質について、「労務の対価や功労報酬、生活費の補助など多様な性質がある」とした上で、法人が正職員に一律の基準で賞与を支給していた点を重視した。賞与が「従業員の年齢や成績に連動しておらず、就労したこと自体に対する対価」に当たるとし、「フルタイムのアルバイトに全く支給しないのは不合理」と指摘した。契約職員には正職員の約8割の賞与が支給されていたことを踏まえ、「アルバイトには6割以上を支給すべき」と判断した。「アルバイトが夏期休暇を取得できず、病気による欠勤中に給与が支払われない点も不合理」とした。一方、基本給の格差などについては退けた。
女性は13年1月に研究室に秘書として雇われ、1日7時間程度、5日間勤務で働いた。研究費の管理などを担当した。15年に適応障害で休職し、16年3月に契約を打ち切られた。時給制で、年収は女性と同年に採用された正社員の約半分であった。
判決後の記者会見で女性側代理人の河村学弁護士は「賞与にさまざまな趣旨があることを指摘した最高裁判決を踏まえ、勤務実態に沿った判断」と評価した。女性は「全国の非正規労働者が働きやすくなればうれしい」と語った。
アルバイト職員への賞与格差を違法とする高裁判決は初めてであり、弁護団も「短期間で雇い止めを受ける非正規労働者を救う画期的判断」と評価した。
脇田滋・龍谷大名誉教授(労働法)の話 = 毎日新聞から引用 = 非正規職員に賞与を支給しないことが労働契約法に反するという判断は異例で、意義が大きい。同一労働同一賃金は世界的には当たり前で、日本だけが取り残されている。賞与や各種手当の格差是正は1つのステップに過ぎない。正規・非正規の格差を抜本的に解消するため、将来的には基本給を同じにする必要がある。
「不合理な格差」 (労働契約法20条)
労働契約法20条はパートや契約社員など有期契約で働く人と、正社員など無期契約で働く人の間の「不合理な格差」を禁じている。13年4月に施行された改正労働契約法に盛り込まれた。基本給だけでなく、手当や福利厚生も対象になる。不合理かどうかは、「仕事の内容や責任の程度」「配置転換」「人事異動の有無」などを考慮して判断される。
同条を巡る待遇格差訴訟で最高裁は18年6月、「賃金総額だけでなく手当など個別の項目ごとに妥当性を精査すべき」との判断基準を示している。
補 足 (鳥居)
今回は①正職員に一律の基準で支給されていたこと、②賞与が従業員の年齢や成績に連動しておらず、就労したこと自体に対する対価に当たること、が重視された結果であり、世の中の一般的なアルバイトが賞与をもらえることにはならない。