

「契約社員にも退職金」 (東京高裁) 労働契約法
東京メトロの売店で働く契約社員1人と元契約社員3人の女性が、正社員との待遇格差に不服を唱え、子会社の「メトロコマース」に対して4900万円の支払いを求めた。
17年3月の東京地裁判決は契約社員1人の早出残業手当が正社員と割増率が異なることを違法と判断したが、他の請求は棄却した。
だが、東京高裁は19年2月20日、現社員1人と元社員2人に66万~87万円、計220万円の賠償を命じた。
退職金について、正社員と同様に算定した額の4分の1以上を支払うべきだとした。川神裕裁判長は元契約社員2人が10年前後勤務した点を重視し「長年の勤務に対する功労報償の性格を有する退職金すら一切支給しないことは不合理」と述べた。
契約社員1人の早出残業手当が正社員と割増率が異なる点について、1審と同様に違法性を認めた。
さらに、住宅手当がないことについても違法性を認めた。
本給と賞与の是正は退けた。
元契約社員のうち1人は労働契約法20条の施行前に退職したとして全面的に請求を退けた。
判決後の記者会見で原告の契約社員・後呂良子さん(64)は「当たり前のことが、やっと認められた。判決に満足はしていないが、一歩前進した」と話した。
正社員との退職金格差を違法とする高裁判決は初めてであり、原告代理人の滝沢香弁護士は「退職金が初めて認められたことには意義がある」と述べた。ただ、原告側は「支払い額が少なく、最高裁の判断を仰ぎたい」として上告する。
水町勇一郎・東大教授(労働法)の話=読売新聞19年2月21日から引用=
「契約社員に退職金を払わない企業が多い中、インパクトのある判決だ。今後は退職金の支給対象となる契約社員の勤務年数や正社員との格差の程度について、社会全体で議論を進める必要がある」。
「不合理な格差」 (労働契約法20条)
労働契約法20条はパートや契約社員など有期契約で働く人と、正社員など無期契約で働く人の間の「不合理な格差」を禁じている。13年4月に施行された改正労働契約法に盛り込まれた。基本給だけでなく、手当や福利厚生も対象になる。不合理かどうかは、「仕事の内容や責任の程度」「配置転換」「人事異動の有無」などを考慮して判断される。
同条を巡る待遇格差訴訟で最高裁は18年6月、「賃金総額だけでなく手当など個別の項目ごとに妥当性を精査すべき」との判断基準を示している。