
労働者災害補償保険法
1章 総 則
2条の2 保険給付・社会復帰促進等事業
則1条 労災保険のうち、保険給付(二次健康診断等給付を除く)並びに社会復帰促進等事業のうち労災就学等援護費及び特別支給金の支給などに関する事務は、都道府県労働局長の指揮監督を受けて所轄労働基準監督署長が行う
3条 適用事業
国の直営事業又は官公署の事業は適用除外
[通達] 特定独立行政法人の職員は国家公務員災害補償法 平13.2.22基発93号
[通達] 暫定任意適用事業で任意加入していない事業に保険給付なし 平12.12.25労告120号 [平21]
[通達] 地方公務員のうち現業部門の非常勤職員は適用 昭42.10.27基発1000号
[通達] 派遣元事業主の事業が適用事業 昭61.6.30基発383号
[通達] 所定給付日数の全部又は一部について在宅勤務でも労災保険を適用 平16.3.5基発0305003号
例:所定給付日数の3/4以上の在宅勤務でも適用[平16]
[通達] ①不法就労の外国人労働者にも労災保険を適用[平12]
②技能実習生として就労する外国人にも労災保険を適用[平16] 平5.10.6基発592号
[通達] 個人経営の林業で常時5人未満 → 労災保険は強制適用、雇用保険は暫定任意適用
平12.12.25労告120号
[通達] 障害者総合支援法に基づく就労継続支援を行う事業場と雇用契約を締結せずに就労の機会の提供を受ける障害者には、基本的には労災保険法が適用されない(平19.5.17基発05170021号)[H28]
整備政令17条、昭50労告35号
「常時5人未満の労働者を使用する個人経営の農業及び水産業の事業のうち、一定のもの」
及び「常時労働者を使用せず、かつ。年間使用労働者延人員が300人未満の個人経営の林業」を
暫定任意適用事業とする
2章 保険関係の成立及び消滅
3章1節 保険関係の通則
則21条の2 障害の程度に変更⇒届出
障害が治った⇒治ゆは前提 [平25]
7条 業務災害・通勤災害・二次健康診断等給付
1項1号 業務災害
労基法施行規則別表1の2
第1号 業務上の負傷に起因する疾病
第6号1又は5 業務による伝染性疾病等
第8号 長期間にわたる長時間の業務・血管病変等
第9号 心理的に過度の負担
[通達] 医療従事者
C型肝炎(HCV)・エイズ(HIV)感染…業務上疾病
HCV感染後は療養の範囲に含まれない
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染は労基法施行規則別表1の2第1号(業務上の負傷に起因する疾病)ではなく第6号(ウイルス性肝炎等)
平5.10.29基発619号 [平23]
[通達] 脳血管及び虚血性心疾患等の認定基準
異常な出来事
短期間の過重業務……発症前おおむね1週間
長期間の過重業務……発症前おおむね6か月
平13.12.12基発1063号 [平22]
[通達] 心理的負荷の認定基準
ストレス-脆弱性理論、同種の労働者がどう受け止めるか? [平24]
概ね6月以内に強い心理的負荷
発病直前1月に概ね160時間超(概ね3週間に120時間以上)時間外労働
(労働密度が特に低い場合を除く)
自殺は業務起因性あり
平23.12.26基発1226第1号
[通達] 業務が相対的に有力な原因
異常な出来事…………発症直前から前日まで
短期間の過重業務……発症前おおむね1週間
長期間の過重業務……発症前おおむね6か月間
平13.12.12基発1063号
業務災害と認定
[通達] 業務により精神障害を発病して自殺をした場合、業務起因性あり
平23.12.26基発1226第1号[平24] (cf)12条の2の2
[通達] 作業中の労働者がその地に多く棲息するハブにかまれた 昭27.9.6基災収3026号
[通達] 作業中に風に飛ばされた帽子を拾おうとして自動車にはねられた 昭25.5.8基収1006号
[通達] 作業中に湯を飲みに行く途中で負傷した 昭26.9.6基災収2455号
[通達] 自動車運転手と助手が積荷のために切断された電線を修理し、感電死した 昭26.12.13基収2826号
[通達] 断崖絶壁の石切り場で、休憩時間中に水を飲みに行く途中の転落 昭24.12.28基災収4173号
[通達] 自宅から出張地に赴く途中の踏切事故 昭34.7.15基収2980号
[通達] 強制参加による運動競技会での事故 昭32.6.3基発465号
[通達] 建設現場の巡回中、部下の作業の手抜きを指摘した作業長が部下に殴打 昭23.9.28基災収167号
[通達] 退勤時にタイムレコーダーを打刻後、事業場施設内の階段で事故…事業主の支配下であるから業務災害
昭49.4.9基収314号
[通達] 出張前後に自宅に立ち寄る(自宅から次の目的地に赴く行為を含む)は出張経路を著しく逸脱していない限り業務 平18.3.31基労管発0331001号・基労補初0331003号 [平25]
[通達] A会社の大型トラックを運転して会社の荷物を運んでいた労働者Bは、Cの運転するD会社のトラックと出会ったが、道路の幅が狭くト
ラックの擦れ違いが不可能であったため、D会社のトラックはその後方の待機所へ後退するため約20メートルバックしたところで停止
し、徐行に相当困難な様子であった。これを見かねたBが、Cに代わって運転台に乗り、後退しようとしたが運転を誤り、道路から断崖を
墜落し即死した(昭31.3.31基収5597号) [H29]
認められなかった事例
[通達] トラック車体検査受検の際、検査場のストーブ煙突の取り外しを手伝い転落 昭32.9.17基収4722号
[通達] 休憩時間中、突然、銃の流れ弾に当たり負傷 昭24.5.31基収1410号
[通達] 会社と労働組合の抗争中、被解雇者が強制就労して負傷 昭28.12.18基収4466号
[通達] 炭鉱で採掘の仕事に従事している労働者が、作業中泥に混じっているのを見つけて拾った不発雷管を、休憩時間中に針金でつついて遊
んでいるうちに爆発し、手の指を負傷(昭27.12.1基災収3907号) [H28]
基準で認定
[通達] 「脳血管疾患及び虚血性心疾患等」「心理的負荷による精神障害等(自殺を含む)」は基準で認定
平13.12.12基発1063号
労基法施行規則別表1の2
第11号 その他業務に起因することの明らかな疾病
1項3号 通勤災害
則7条 要介護状態…2週間以上の常時介護 [平21選]
通勤災害と認定
[通達] 夫の看護のために1日おきに寝泊まりしている病院は住居である 昭52.12.23基収981号
[通達] ①昼休みに自宅に戻り、再度出勤する行為は通勤である
②寝過ごしで遅刻・ラッシュ回避の早出…時間的に若干の前後があっても就業との関連性はある[平24]
平18.3.31基発0331042号
[通達] 単身赴任者が帰省先住所から赴任先住所へ移動する場合、業務の当日又は前日であれば就業と関連性あり 平18.3.31基発0331042号
認められなかった事例
[通達] 運動部の練習に参加する目的で、午後の遅番の出勤者であるにもかかわらず、朝から住居を出る等、所定の就業開始時刻とかけ離れた時
刻に会社に行く場合、通勤に該当しない(平18.3.31基発0331042号) [H24]
[通達] 日々雇用される労働者が公共職業安定所でその日の職業紹介を受けるために住居から公共職業安定所等に行く行為は、通勤に該当しない
(平18.3.31基発0331042号) [H24]
具体的に判断
[通達] 免許の不携帯だけでは「合理的な方法」を否定できない。泥酔は駄目 昭48.11.22基発644号
[通達] 事業場施設内でのサークル活動後の帰宅…社会通念上就業と帰宅との直接的関連を失わせるほど長時間の場合を除き、就業との関連性がある 平18.3.31基発0331042号[平24]
[通達] 単身赴任者や独身者にとって家族の住む家屋は就業場所との往復に反復・継続性(おおむね毎月1回以上)があれば通勤 平18.3.31基労管発03310001号・基労補初0331003号 [平25]
2項 通勤の定義
3項 逸脱・中断
[通達] 展示会に立ち寄る…日常生活上必要な行為に当たらない 昭49.11.27基収3051号
[通達] 喫茶店で約40分過ごした後の事故…通勤災害ではない 昭49.11.15基収1867号
[通達] 通常は自宅で食事をしていた妻帯者が通勤途中で食事をした後の事故…通勤災害ではない
昭49.4.28基収2105号
[通達] 理髪店・美容院の後に事故…原則、通勤災害 昭58.8.2基発420号
[通達] マイカーのライトの消し忘れに気づき、駐車場に引き返す途中の事故…通勤災害となり得る
昭49.6.19基収1739号
8条 給付基礎日額
1項 給付基礎日額は労働基準法12項の平均賃金に相当する額
2項 平均賃金が適当でなければ厚生労働省令の定めにより政府が決定、所轄労働基準局長が算定
則9条 粉じん作業以外の作業に常時従事することとなった日を算定事由発生日とみなして算定した平均賃金相当額の方が高ければそっちを使う
8条の2
1項 休業給付基礎日額は、四半期ごとの平均給与額が算定事由発生日の属する四半期の平均給与に比べ10%を超えて変動した四半期の翌々四半期の最初の日からスライド制を適用
2項 療養開始後1年6月を経過した日後、年齢階層別の最低・最高限度額を適用
(cf 8条の3第2項)
四半期の初日における年齢
3項 年齢階層別の最低限度額
4項 年齢階層別の最高限度額
8条の3
1項 年金給付基礎日額
2項 8条2項~4項を準用する
最初に支給される分から年齢階層別の最低・最高限度額を適用(cf 8条の2第2項)
年度の8/1(4月~7月は前年度の8/1)における年齢
労働者が死亡しなかったとした場合の8/1の年齢であり、受給権者の年齢ではない
8条の4 一時金の給付基礎日額
障害(補償)一時金・遺族(補償)一時金の給付基礎日額 年齢階層別適用なし[平21]
附則58~63条 一時金の給付基礎日額にスライド制は適用、年齢階層別の最低・最高限度額は不適用
(ex)葬祭料
8条の5 給付基礎日額は1円未満切り上げ
⇔自動変更対象額は10円未満四捨五入
休業給付基礎日額 年金給付基礎日額
基 準 四半期ごとの平均給与額 毎月勤労統計の年度の平均給与額
スライド制 翌々四半期の最初の日 算定事由発生日の属する年度の翌々年度の8月
年齢階層別の最低・最高限度額 療養開始日から1年6月経過 最初に支給される分から
自動変更対象額 ← 毎月勤労統計の年度の平均給与額
年齢階層別の最低・最高限度額 ← 賃金構造基本統計
[通達] 休業給付基礎日額:1年6月を経過した日…療養を開始した日の属する月の翌月から起算して18月目の月における当該療養の開始日に応答する日 昭52.3.30発労徴21号
11条 未支給の保険給付
1項 遺族(補償)年金以外 ⇒ 死亡の当時生計を同じくしていた者
遺族(補償)年金 ⇒ 同順位者、転給で次順位者
[通達] 未支給の保険給付の請求権者が死亡→未支給の保険給付の請求権者の相続人が請求権者となる
昭41.1.31基発73号
12条 内 払
2項 遺族補償年金と他の保険給付は内払されない
3項 休業補償給付は傷病補償年金の内払とみなす
12条の2 過 誤 払
(cf) 特別支給金は譲渡・差押え可
12条の2の2 故意又は重大な過失
[通達] 故意の犯罪行為による休業補償給付は支給事由の存する間30%の支給制限
昭40.7.31基発906号、昭52.3.30基発192号
[通達] 労働者の重大な過失による業務災害で死亡→遺族補償年金の支給制限はなし
昭52.3.30基発192号
[通達] タンクの重油内に転落した同僚を救出するためにタンク内に降り転落死した。結果の発生を認容していても業務との因果関係が認められる事故は故意によるものとしない 昭34.12.26基収9335号
[通達] 正常な認識が著しく阻害された状態の自殺…故意による死亡ではない
平23.12.26基発1226第1号(cf)7条1項1号
[通達] 故意の犯罪行為若しくは重大な過失により、又は正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないことにより、障害の程度を増進させ、又はその回復を妨げたものでも、政府は介護(補償)給付に関して支給制限を行わない 平8.3.1基発95号
[通達] 無免許運転が危険と知りつつ資格を詐称して貨物自動車を運転し、急スピードのまま急カーブを切ろうとして転覆し負傷した場合、故意には当たらないが重大な過失である 昭23.3.5基発405号
12条の3 不正受給者からの費用徴収
↕
雇用保険は2倍返し
[通達] 不正受給者等から徴収する金額は不当利得分(偽りその他不正の手段により給付を受けた部分)に限られる。療養開始日(即死の場合は事故発生日)の翌日から3年以内に支給事由が発生した保険給付
昭40.7.31基発906号
[通達] 不正受給者からの費用徴収は、偽りその他不正の手段により給付を受けた部分に相当する価額とし、二次健康診断等給付も対象とする 昭40.7.31基発901号
[通達] 療養(補償)給付、介護(補償)給付、二次健康診断等給付は事業主からの費用徴収の対象外である
平8.3.1基発95号
12条の4 第三者行為災害
損害賠償請求の求償・控除は災害発生後3年以内に支給事由が発生した保険給付
[通達] 災害発生後7年間に支給事由が生じたものについて保険給付をしないこと可
平25.3.29基発329号
(cf)19条・附則64条
[通達] 第三者行為災害で、加害者から慰謝料などの精神的苦痛に対する損害賠償を受けた場合でも、政府は保険給付を行う 昭32.7.2基発551号
[通達] 精神的苦痛に対する慰謝料・見舞金等は第三者行為災害調整の対象外 昭35.11.2基発934号
[通達] 示談前に政府が損害賠償請求権取得なら、受給権者は示談による放棄不可 昭38.6.17基発687号
12条の5
1項 保険給付を受ける権利は、労働者の退職によって変更されない。契約期間満了でも支給
2項 譲渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない
ただし、年金たる保険給付を受ける権利を(独)福祉医療機構法の定めるところにより、(独) 福祉医療機構に担保に供することは可。小口資金貸付け可
12条の6
[通達] 保険給付も特別支給金も非課税 昭50.2.28国税庁直税部心理課長より労災管理課長あて回答
12条の7 保険給付を受ける権利を有する者:届出・物件提出
12条の8 業務災害に関する保険給付
1項 傷病補償年金・介護補償給付は労災法独自 = 労基法に対応なし [平22]
2項 船員法の災害補償も含む [平22]
3項 傷病補償年金は所轄労働基準局長の職権
療養開始後1年6月で治っていない場合、同日後1月以内に傷病の状態等に関する届出書を提出
支給期間はないが、療養開始後1年6月経過後に傷病が治ゆせず、かつ、傷病等級1~3級なら傷病補償年金を支給する。その場合、休業補償給付は行わない。(cf)18条
4項 介護補償給付は常時又は随時介護を要する状態にあり、かつ、常時又は随時介護を受けているときに支給する。次の期間は除く
① 障害者支援施設に入所(生活介護を受けている)
② 障害者支援施設(生活介護を行う)に準ずる施設の入所
特別養護老人ホーム、原子爆弾被爆者特別養護ホーム(則18条の3の3)
③ 病院又は診療所(介護老人保健施設を含む)に入院
⇔ 労災特別介護施設に入所中は支給
則別表第1 障害等級表 [平21] 則別表第2 傷病等級表
●胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、 3級 ●胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に労務に服することができないもの
特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 245日分 ●両手の手指の全部を失ったもの
●胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、 4級
常に労務に服することができないもの 213日分
●両手の手指の全部を失ったもの
●両耳の聴力を全く失ったもの
●両手の手指の全部の用を廃したもの
●両足をリスフラン関節以上で失ったもの