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事  例

 過労事故死

 概  要

 商業施設への植物の装飾を手掛ける「グリーンディスプレイ」(世田谷区)に勤務していたAさん(当時24、稲城市)が2014年、ミニバイクで帰宅途中に事故死したのは会社に責任がある。横浜地裁川崎支部(橋本英史裁判長)で2018年2月8日、和解が成立した。

 Aさんは奨学金とアルバイトで大学の(二部)に通い、2013年の春に卒業した。9月、ハローワークを通じて同社に応募した。10月からアルバイトで働き、翌14年3月に正社員となった。

 求人票には「試用期間なし。就業は朝から夕方。残業は月平均20時間」とあったが、実際には早朝・深夜の勤務が当たり前であった。会社には仮眠室があったが、休憩は取れなかった。

 4月24日午前、徹夜勤務を終えて仕事先の横浜市都筑区からミニバイクで帰宅途中、川崎市麻生区で電柱に衝突して亡くなった。事故当日の労働時間は、前日からの約22時間で事故前1か月間の時間外労働は91時間余りに及んでいた。労災

 和解勧告

 地裁は「休憩時間があった」とする会社側の主張を退けた。拘束時間のほとんどが勤務時間と算定された。Aさんは「顕著な睡眠不足」であり、「居眠り状態に陥って運転を誤り、事故を起こした」。「バイク通勤は会社の指示であった」。会社は「事故の危険を認識できたにもかかわらず、公共交通機関を利用するよう指示しなかった」。

 和解勧告は電通新入社員の過労自殺にも言及した。「過労死撲滅は喫緊に解決すべき重要課題で、従業員や家族、社会全体の悲願である」。過労死等防止対策推進法の定義に該当しない過労事故死についても、「雇用主は、労働者の通勤に際し、過労で事故を起こさないよう注意する安全配慮義務を負う」。双方が勧告を受け入れた。

 会社は両親ら(八王子市)に謝罪し、約7590万円払う。再発防止策(勤務終了から次の勤務まで11時間以上空ける「勤務時間インターバル」、フレックス制、仮眠室設置、深夜タクシーチケット交付)を実施する。

 和解の意義

 これまで、通勤中の交通事故は労働者の自己責任とされ、企業の責任が問われることはほとんどなかった。帰る方法は本人が決められることに加え、事故と過労との因果関係を立証するのが難しく、本人の病気や不注意による運転ミスの可能性もあるためである。2014年施行の過労死等防止対策推進法でも、過労事故死は定義されなかった。

 だが、2015年に電通の新入社員(当時24)が過労自殺し、この頃から企業の労務管理に対する社会の目が厳しくなった。

 企業は「労働者を安全に帰宅させるべきである」「過労事故死の防止に努めなければならない」。通勤時の事故で会社の責任を認めら今回の和解は画期的である。

 (参照)

 「手足がもげるまで働け」残業87時間で残業代ゼロ…1日22時間労働、24歳社員死亡 (2015.10.21)

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