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                       弱者者の固定化の実態

 グローバル化の危険性

 

 労働弱者の今

 平均賃金は正社員・正職員32万、それ以外20万である。つまり、非正規は正規の63%である。

 格差は50~54歳で最大となる。正規40万(男44万、女29万)、非正規20万(男23万、女18万)であり、非正規は正規の49%(男54%、女61%)である。女は45~49歳で賃金最大である(14年、賃金構造基本統計)。正規の多くは男、非正規の多くは女である。男女計では、正規の平均は男の平均に近く、非正規の平均は女の平均に近い。男女計で非正規が正規の49%と低くなるのはそのためである。

 賃金の25~75%点は男22~39万、女17~27万である(14年、賃金構造基本統計)。短時間労働者を除く一般労働者の半数がこの中に入る。中央値は男29万、女21万であり、女は男の74%である。平均賃金は男33万、女24万であり、女は男の72%である(14年、賃金構造基本統計調査)。

 

 外国人への押しつけ

 日本の人口は60年に87百万人、うち高齢者(65歳以上)35百万人、労働人口(15~64歳)44百万人となる(国立社会保障・人口問題研究所、12年推計)。内閣府は「15年から毎年20万人の移民を受け入れ、かつ合計特殊出生率が2・07に回復して30年以後それが維持された場合、60年の人口は11千万人となる」と試算する(14年2月発表)。

 政府は14年4月、外国人技能実習生の受け入れ延長を発表した。実習3年修了後、就労2年を認める。帰国1年後再来日では3年間認める。建設業限定で15~20年度の時限措置となる。東日本大震災からの復興に東京五輪の準備が加わり、建設業では15~20年度に延べ15万人の人材が不足している。約半数の7万人を中国人やベトナム人の実習生に頼る。

 家事支援外国人を特区で受け入れる法案は14年10月に閣議決定された。介護、農林水産業、製造業での受け入れは検討中である。

 

 フランスの場合

 15~64歳の移民の出身地は北アフリカ(モロッコ、アルジェリア、チュニジア)3割、EU(ポルトガル、イタリア、スペイン)3割、トルコ5%である。トルコ出身者は労働力率58%、失業率26%、就業率43%と深刻である(09~11年、仏労働・雇用省「11 年における移民の雇用と失業」)。

押しつけ…移民は就業者全体の9%に過ぎない。だが、家事代行・家事支援35%、警備員29%、建設業の熟練労働者27%、管理職を除くホテル・レストラン従業員19%を移民が占める(09~11年、仏労働・雇用省「11 年における移民の雇用と失業」)。

 排  斥…「移民が多すぎる」74%、「移民は社会的保護を受けるためにだけフランスに来る」77%と、反感が伸びた(13年、仏人権諮問委員会)。この数十年は就業目的の経済的移動よりも婚姻などの家族移動が多い(仏内務省)。家族移動による移民を、フランス人は「社会的保護目的移民」ととらえる(13年、仏人権諮問委員会)。

国民戦線前党首ジャンマリ・ルペンは「ナチスのガス室は歴史上のささいな出来事」「移民にエボラウイルスをばらまけ」と差別発言を繰り返してきた。だが、11年にマリーヌ・ルペンが党首に就いた。得票率は14年の欧州議会選25%、15年県議選の第1回投票25%と躍進した。差別主義者の前党首は15年の地域圏議会選への出馬を断念した。

 人種差別的・反ユダヤ的な党は反EU、反移民を掲げる普通の党に変わった。シャルリーエブド襲撃事件を契機に左派の支持も吸収し始め、現党首は17年大統領選の有力候補となった。

 

 排斥派との対立

 子どもの権利…フランスでは13年にロマ人の女子中学生が学校行事中に拘束され、一家はコソボに強制送還された。国民の7割は女子の拘束を支持した。オランド大統領は「復学を希望すれば女子のみ再入国を認める」とした。

 日本では09年に不法滞在フィリピン人一家が強制送還された。娘だけは在留特別許可で中学に通い続け、高校に進んだ。

 不法占拠…フランス政府は10 年、ロマ人の不法キャンプを撤去して強制送還した。国民の8割は不法キャンプ撤去を支持した。欧州委員会は「ルーマニアやブルガリア国籍のロマ人の送還はEU法に反する」と批判したが、フランス政府は「治安、公共秩序の維持が目的」と主張した。

 京都朝鮮第一初級学校が公園不法占用を続けた。それに対して在特会、主権会、チーム関西の構成員が民族差別発言を繰り返した。差別主義団体の侮辱、威力業務妨害、建造物侵入、器物損壊(11年京都地裁、12年最高裁)と1226万円の損害賠償が確定した(14年最高裁)。また、初級学校の都市公園法違反も確定した(10年京都簡裁)。

 2つの差別

 移民増は2つの差別を生む。

社会的重要度の割に低賃金の部門は外国人に任せる。低賃金の若者を受け入れ、期間が過ぎれば帰国させる。外国人労働者は移民を区別し、国籍も永住権も与えない。押しつけ派の差別主義者は、割に合わない労働を外国人に押しつける。

低賃金外国人の増加は日本人の賃金を低下させ、職を奪う。結果、非婚・少子化がさらに進み、労働人口はさらに減少する。

 外国人労働者を増やせば移民も増える。移民の低年金、無年金、失業、生活保護は税金で支える。排斥派の差別主義者は「外国人は母国へ帰れ」と暴れる。

たしかに、介護、農業、漁業、建設、製造では労働力が不足している。だが、それを外国人に頼ってはならない。その部門で賃金を上げ、正規労働者を増やすのが健全な考え方である。

 今、労働力人口に含まれない女性のうち就業希望者が303万人いる。中でも、出産・育児のために働けない女性は101万人である(14年平均、総務省「労働力調査」)。移民を増やす前に、女性が働きやすい社会をつくるべきである。

 米金融資本による支配

 

 政府の借金は国民の資産

 政府の借金は国債・財政投融資債885兆円(海外比率5%)、国庫短期証券を含めて1023兆円(9%)である(14年第4四半期暫定値)。だが、海外比率は1割未満であり、9割以上は国民の資産である。

国民が銀行に貸した金が預金、郵便局に貸した金が貯金、国に貸した金が国債である。日本の個人金融資産は1694兆円であり、うち890兆円(53%)が預貯金、447兆円(26%)が保険準備金と年金準備金である(14年12月末)。保険準備金は積立型保険の積立金の加入者持分相当部分のことであり、年金準備金は私的年金の積立金の加入者持分相当部分のことである。

 外国人が外貨で国内資産を買えば国内の外貨が増える。「政府の借金+国民間の借金+外貨」は国内資産であり、政府の借金が国内資産を超えることはない。

 国債は外国人でも日本円で買う。紙幣を印刷して返すこともできる。他国からユーロで借りたギリシャとは違う。

日本の個人金融資産は1694兆円あり、これは国債残高1023兆円の1・66倍である。財務官僚が増税の必要性を説くのは税収を確保して自らの権限を維持するためである。増税のために借金を強調するのは詐欺であり、騙される人は無知である。

 

 ブラックロック

 08年12月、「かんぽの宿」など79施設をオリックス不動産に109億円で売却する契約が結ばれた。形は入札だが実質的には随意契約であった。07年に民営化された日本郵政は全株式を政府が保有する実質国有会社であった。79施設は建設費に2400億円をかけた国民の資産であった。

 07年、ザイマックスの伊藤和博が日本郵政に送り込まれた。ザイマックスの株式の1・5%はオリックスのものであった。08年、メリルリンチが日本郵政の顧問となった。伊藤はかんぽの宿をオリックスに売却する担当役員として契約を進めた。

09年1月に鳩山邦夫(総務相)が異議を表明し、2月には契約が白紙撤回された。鳩山は西川善文(日本郵政社長)の辞任を求めたが、麻生太郎(首相)が西川の続投を容認した。6月には鳩山自身が辞任に追い込まれた。

 オリックスは株式の過半数を外国人が保有する外国会社である。メリルリンチは09年からバンク・オブ・アメリカの支配下にある。

 メリルリンチは世界最大の資産運用会社ブラックロックの筆頭株主である。ブラックロックは4年で運用資産を倍増させ、すでに世界を支配した。10年3月に289兆円(3・56兆㌦)であった運用資産は15年3月には573兆円となった。

 

 国民皆保険の破壊

 インターフェロン療法は健康保険法63条1項の療養の給付であり、74条1項により患者は費用の一部を負担すればよい。だが、インターフェロン療法(保険診療)と活性化自己リンパ球移入療法(自由診療)の混合診療ではインターフェロン療法も含めて全額自己負担となる。

 例外もある。混合診療でも評価療養(先進医療や治験診療など)と選定療養(個室ベッド代など)に関しては健康保険法86条により保険診療部分について保険外併用療養費が支払われる(11年10月25日最高裁判決)。

 宮内義彦(オリックス会長)は非公開の勉強会で「一度、混合診療枠に入れたものを皆保険で認めてはいけない」と語った。04年、宮内が議長を務める規制改革・民間開放推進会議の主導で混合診療が大幅に拡大された。

昔はなかったCTやMRIも今は普通の技術である。他の新しい技術もいずれは普通の技術となる。だが、それが混合診療枠のままであれば保険が使えない。高額の医療費を避けるためには医療保険に入るしかない。保険料が払えない庶民は診療を諦める。保険に入っていても、条件を満たさければ使えない。

米製薬会社は、既存薬の形や使い方を変えた医薬品を「新薬」として特許申請する「エバーグリーニング」とよばれる手法を認めさせようとしている。それにより、ジェネリック薬の販売が妨害され、安い薬は手に入らなくなる。

 

 食と農業の破壊

 一戸当たりの耕作面積は米国が日本の百倍、オーストラリアが千五百倍である。関税が撤廃されれば日本の農業は壊滅的な打撃を受ける。

 25年までに関税を撤廃した場合、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の参加12か国の農産物輸出額は6%(85億㌦)増える。うち33%(28億㌦)を米国が得るが、日本の取り分は1・4%(8300万㌦)に過ぎない。逆に、参加国全体の輸出増加額の68%(58億㌦)が日本に輸入される(米農務省、14年試算、1㌦=116円)。

 関税撤廃後の日本の農産物生産額減少率をコメ32%、砂糖100%であるが(日本政府の試算)、米農務省は関税以外の豚肉の差額関税制度や砂糖の価格調整制度などを意図的に外し、コメ3%、砂糖2%と主張する。

米国は、BSEの危険性を有する米国産牛肉の輸入制限を緩和させようとしている。米国通商代表部は10年の外国貿易障壁報告書の中で、輸入食品・農産物の検査、遺伝子組み換えなどの食品表示などが厳しすぎると批判している。11年の日米経済調和対話では、残留農薬や食品添加物などの規制緩和を求めている。

 日本学術会議の試算によると、農林水産業は洪水防止機能、土砂崩壊防止機能、水質浄化機能、生態系保全機能などの多面的機能をもち、その効果は年90兆円である。農林水産業を守ることは国土を守るためにも重要である。

 

 

  I S D に苦しむ韓国

 外国の投資家は投資家対国家の紛争解決条項(ISD条項)により国際投資紛争解決センター(ICSID)に訴えることができる。

 審問の多くはワシントンDCかパリの世界銀行施設内で行われる。自国の裁判所での判決は無視され、国は外国の投資家から莫大な請求を受ける。自民党も12年衆院選では「主権侵害のISD条項に反対」としていた。

 

 ローンスター

[事例1] 米系私募ファンド「ローンスター」は07年、極東建設株、スターリース株(旧ハンピット与信専門)、外換銀行株などを2727億円(2兆1523億ウォン)で売却し、1900億円(1兆5千億ウォン)の利益を得た。だが、韓国での税金は払わなかった(ウォン=0・1267円、07年)。

ローンスターは極東建設株をKCホールディングス、スターリース株をHLホールディングス、外換銀行株をLSF‐KEBホールディングスといったベルギー法人を通じて売買した。韓国・ベルギー投資保障協定(BIT)により、課税権はベルギーにあり、韓国にはない。

[事例2]  ローンスターは12年に韓国政府をISD提訴し、審問は15年5月に始まった。為替変動に伴い、請求額は5647億円(46億7900万㌦)に変更された(㌦=120・69円、15年5月)。

ローンスターは03年、外換銀行株51%を1346億円(1兆3,830億ウォン)で取得した(ウォン=0・0973円)。それを07年に香港上海銀行(HSBC)に7523億円(5兆9376億ウォン)で売却しようとしたが、韓国政府の承認が遅かったために契約が成立しなかった(ウォン=0・1267円)。そのため、12年1月にハナ銀行に2635億円(3兆9157億ウォン)で売却した(ウォン=0・0673円)。

ローンスターは「韓国政府の承認が遅れたことで2236億円(2兆219億ウォン)の損害が発生した」と言う(ウォン=0・1106円、15年5月)。また、「外換銀行の実質的な所有権は03年からベルギーの子会社LSF-KEBホールディングスにあり、08年からは韓国常駐事業者もいない。したがって、韓国・ベルギー投資保障協定(BIT)により韓国に課税権はない。売買代金の10%の264億円(3916億ウォン、ウォン=0・0673円、12年1月)を含む940億円(8500億ウォン、ウォン=0・1106円、15年5月)が不当に徴収された」と言う。だが、韓国税法では背後の実質的な収益帰属者に課税するのが原則である。

[事例3] ローンスターはベルギーにスターホールディングスを設置した。スターホールディングスの100%出資で韓国に㈱スタータワーを設置した。㈱スタータワーは01年に600億円(6千余億ウォン)で購入したスタータワービル(現江南ファイナンスセンター)を、04年にシンガポール投資公社(GIC)に850億円(9千億ウォン)で売却し、差益250億円(2千数億ウォン)を得た(ウォン=0・0945円)。

05年、韓国国税庁はローンスターに150億円(14百億ウォン)を課した(ウォン=0・1076円)。「資産価値の50%以上を不動産が占める法人の株売買は韓国が課税する」という韓米租税条約を根拠とした。15年5月、高裁は課税の大半を認めた。

 

  I P I C

 国際石油投資会社(IPIC)の子会社ハノカル・インターナショナルとIPICインターナショナルは15年5月、韓国政府に203億円(1838億ウォン)を求めるISD提訴した(ウォン=0・1106円)。

ハノカルは1999年に現代オイルバンクの株式50%を取得し、2010年8月に現代重工業に1331億円(1兆8,381億ウォン)で売却した。その際、売買代金の10%に当たる133億円(1838億ウォン)を韓国国税庁に源泉徴収された(ウォン=0・0724円、10年)。

 ハノカルはIPICのオランダの子会社で、08年以降の平均従業員数が1人のペーパーカンパニーである。国税当局は租税法の実質課税原則により韓国で課税したが、ハノカルは「韓国とオランダの二重課税だ」として提訴した。ハノカルは韓国の地裁、高裁で敗訴し、大法院に上告した。だが、韓国内での勝訴は難しいと判断し、15年にISD提訴した。

 IPICはアブダビの国営企業であり、日本ではコスモ石油の筆頭株主である。マンスール会長はアブダビ国王の次男で、イングランドのマンチェスターシティ球団のオーナーとして知られている。

 

 対岸の火事ではない

 イランの家電会社エンテカプも韓国を提訴する。韓国はすでに外資の餌食である。だが、ローンスターも、IPICも、エンテカプも、国民には内容が知らされていない。

 韓国だけではない。たとえば、スウェーデンの電力会社は脱原発のドイツ政府に38億㌦の損害賠償を求めた。

ISD条項は国家から司法権を奪う。自民党も12年衆院選では「主権侵害のするISD条項に反対」としていた。それらは日本の未来を暗示している。

 トリクルダウンの嘘

 

 米国の場合

 07年8月にサブプライムローン問題の顕在化で世界金融危機が始まった。08年9月にリーマン・ブラザーズ証券が倒産し、米下院による緊急経済安定化法案の否決を契機に株価が暴落した。この金融危機で貧富の格差が拡大したことがわかった。

10年以後、家計所得の31%は上位3%の富裕層に集中している。家計純資産における上位3%の保有率は、89年には45%であったが、07年に52%となり、13年には54%に達した。負債は平均で13%減少したが、これは住宅保有率の低下による(米連邦準備理事会=FRBが14年9月4日に公表)。

 

 株高と庶民

 公定歩合を引き下げる金利政策は円の流通量を増やす。99年に始まったゼロ金利政策は、無担保コール翌日物の金利を0・15%に誘導するものである。

日銀が市中銀行から国債を買えば、市中銀行の日銀内当座預金残高が増える。当座預金残高は無利子であるため、市中銀行は一般への融資を増やし、円の流通量は増える。

日銀が円を発行して国債を購入することを量的緩和という。01~06年、物価上昇率目標0%以上の量的緩和が実施された。13年、上昇率目標2%の量的緩和が始まった。

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)、国家公務員共済組合連合会、地方公務員共済組合連合会、日本私立学校振興・共済事業団の3共済、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険が国債を売却して株式比率を増やす。日銀は上場投資信託(ETF)の購入を進める。これらの公的機関は5頭の鯨とよばれる。

 鯨による株高は国債の価値を下げた。ゼロ金利、量的緩和による株高は円安が原因であり、対ドルでは上がっていない。量的緩和で市中の国債流通量は減ったが鯨が暴れて再び増えた。株価だけ上がってもトリクルダウンがなければ庶民の暮らしは楽にならない。

 

 韓国の場合

 近年のグローバル主義で財閥と多国籍企業に富が集中し、庶民の暮らしは破壊された。14年の大韓航空機ナッツリターン事件はその背景から生まれた。

 今、0・83%(50・62万社中4223社)の大企業が全企業の売上高の64%(4131兆ウォン中2659兆ウォン)を独占する(13年、韓国統計庁「営利法人企業体の行政統計暫定結果」)。10大財閥が全企業に占める割合は売上高25%、利益42%である(13年、チェボル・ドットコム)。

77~86年頃生まれの庶民は大卒でも非正規で働く。平均給与は88万ウォン(9・7万円)で、88万ウォン世代とよばれる。また、恋愛、結婚、出産を諦めた三放世代ともよばれる(ウォン=0・1106円、15年5月)。

75~95年頃生まれは三放に住居準備、人間関係が加わって五放となった。諦めたものは結婚、住居準備、出産、恋愛、対人関係の順に多い。男は結婚、恋愛、住居準備を諦め、女は出産、結婚、住居準備を諦める。諦めた理由は「貯金がない」「収入が少ない」である(15年、就職ポータル・サラムイン)。

 

 受験地獄と早期退職

 庶民は厳しい受験競争を経て財閥系企業に入ろうとする。その勉強は学問とは無縁であり、就職活動の一環としての意味しかない。したがって、科学系のノーベル賞は出ない。受験地獄は単なる地獄である。

財閥3世は28歳で入社し、31歳で役員になるが(15財閥の平均、ハンギョレ新聞14年12月15日)、大卒庶民は入社から役員までに22年かかる(14年、韓国経営者総協会)。

 事務職の定年は「45定、56盗」(45 歳で定年、56 歳で職場に残っていたら盗賊)とよばれる。徴兵制があるため、入社年齢が高く昇進が早い。役員に昇進できなかった者は「名誉退職」し、飲食店などを始める。自営業率は22%である(14年、韓国統計庁)。OECD基準では韓国27%は米国7%の4倍である。(13年末)。

 自営業者の借金は事業206兆ウォンと個人245兆ウォンの計451兆ウォン(39兆円)である(13年3月、韓国銀行推計)。自営業者の人数565万人(13年、韓国統計庁)で割ると、1人当たり686万円の借金となる(ウォン=0・0859円、13年3月)。

日本は就業者6376万、自営業者と家族従業者756万であるから、12%である(15年2月季節調整値)。日本の自営業率は米韓の間にある。

 

 定年引上げで人件費高騰 

 逆に生産職は定年まで働く。3百人以上の事業場では定年55~60歳が94%を占める(11年、韓国雇用労働部「高齢者雇用現況」)。3百人以上の事業場では16 年から、それ以外は17 年から60 歳定年制が義務化される

定年引上げによる人件費増に備え、一定年齢以上の賃金を下げる賃金ピーク制の導入が検討されているが、労使の合意は容易ではない。

 

 無戸籍者5万人

83年から無戸籍者1万人を支援し戸籍を獲得できるようにした功労で、05年に国民勲章「牡丹章」を受けたチョン・ジョンニョンは、無戸籍者を5万人と推定する。彼らは学校にも病院にも行けず、生活保護も受けられない。無戸籍者による生計型犯罪は社会を不安定化させる(朝鮮日報15年5月24日)。

 

 GDP比の嘘(統計学の話)

 10大財閥の売上高はGDPの76%(946兆ウォン÷1237兆ウォン)を占めるが、その雇用割合は7%に過ぎない(11年、チェボル・ドットコム)。7%の特権階級が富の76%を独占し、93%の人は残りの24%で暮らす。

 下線部は嘘である。「財閥売上高÷GDP」と「財閥売上高÷全企業売上高」を混同するのは無知か詐欺である。

 たとえば、30歳で体重60kgの女性がいたとき、「体重は年齢の2倍」と言っても意味がない。体重と比べられるのは平均体重や他人の体重である。同様に、財閥の売上高と比べられるのは全企業の売上高である。

 実際、10大財閥の売上高が全企業に占める割合は29%(946兆ウォン÷3286兆ウォン)である(11年、チェボル・ドットコム)。

​   ジョン・ロールズの正議論に基づき、弱者保護政策を支持する!!

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